どちらも一歩も引く事なく会話が膠着したその時、遠慮がちにドアをノックする音が響いた。

「だれです!?」

苛立ちを隠す事もなくシーモア伯夫人の詰問の声にゆっくり開いた扉から現れたのは、ヴェネディクトだった。

「ヴェネディクト!どうしたの!?」

さっきまでの言い合いを聞かれていたのだと思うと恥ずかしい。驚きながらも、グレースはヴェネディクトの顔を直視する事が出来なかい。

「いや、さっき大切な事を伝え忘れてしまったからね。それを伝えるのと、謝罪をしに来たんだ」

だがグレースの居心地の悪さを打ち消すように、ヴェネディクトは朗らかな笑顔でシーモア伯夫妻に向き合った。