子供心にも「大丈夫なのか!?」と疑問に思ってしまうほと曖昧な理由を答えにくれた父親は、やっぱりと言うべきか残念ながらと言うべきか、この会話から数年後に継母を連れてきた。

「グレース、分かっておくれ。まだ小さなお前には母親が必要なのだよ。でも心配は要らない、この人はとても優しく慈愛に満ちた人だ。自分の娘同様、お前の事も愛してくれる」

「そうかしら?」

初対面の時、十歳のわりに大人びて、深窓の令嬢のわりに疑り深く慎重な性格だったグレースの口から出たのは、自分でも可愛気がないと思う言葉だった。父親は動きを止めたし、継母は顔に貼り付けた偽善の笑みを引っ込めてしまった。

でも、そのカンは悲しいくらいに当たってしまう。

継母はお伽話と同じでやっぱり意地悪だったのだ。予想外だったのは継母が連れてきた五歳下の妹アナベルの可愛らしさと、再婚から一年後に産まれた弟のウィルターの愛おしさ。私ってこんな子供好きだったかしら?と不思議に思うくらい、グレースは純粋に弟妹が好きになった。