ヴェネディクトの声はいつもよりも小さかったけれど、はっきりとグレースに届いた。それはきっと、ヴェネディクトの伝えたいという意思の強さからだろう。

「グレースはきっと僕の事を、献身的で自己犠牲を厭わない良いヤツだと思ってると思う。それは僕がそう見せて来たのも大きいから、グレースの勘違いって訳じゃないけど。でも真実ではないんだ。婚約をいいだしたのも、グランサム公爵邸に連れて来たのも自分の為だから」

「じゃあ、これまで私に優しかったのも?全部ヴェネディクトの為?」

「それは違う。……でもグレースの為だけじゃなくて、僕の為って時もあったし」

「でもヴェネディクトの優しさで私が救われたのも事実だわ。ヴェネディクトがいてくれたから、私が前を向いて生きてこれたのも、ね」