それにグランサム公爵自身も、仲良くなったグレースとの婚約破棄を快く思わないかもしれない。

「せめてグランサム公には本当の事を打ち明けようかしら……」

溜め息と一緒に唇から溢れた言葉を、今度はヴェネディクトは気付かなかった。その代わり、満面の笑みと弾んだ声でグレースに告げる。

「見えたよ!」

促されるままグレースが窓の外を見ると、斜め前方に立派な尖塔が何本も見える。金属の屋根が光を反射してきらきらと輝く様はとても綺麗だ。

「素敵だわ……」

「近くに行ったらもっと素敵だよ。数年前にグランサム公が費用を出して修繕したから、王都の大聖堂より綺麗かもよ?」

グレースに悪戯っぽく片目をつぶってみせたヴェネディクトは、そのまま機嫌良く話し続ける。