ヴェネディクトが話すべきだと思うならグレースは聞いておくべきなのだ。そこに迷いはない。
向かいでは 今日初めて焦りの表情を浮かべたカーライル子爵の顔が視界の端に映ったが、それは無視する。

「まず、僕は裕福な爵位を持っている女性を望んでいないし、結婚する必要もないんだ」

「ーーーそれは自分で事業をしてるから?」

グランサム公爵に教えを請い一緒に事業を興したと先日聞いたばかりだ。そこで築いた財産はグレースが思っていたより高額で生活に困らないという事だろうか。

「うん、それもあるよ。自分の力で守りたくてちょっと無理して頑張ったからね。幸運もあったけど、たった二年でそれなりの材を築けた。でも、それだけじゃないんだ」

「え?」

「実はね、グレース。僕は次期グランサム公爵になるんだ」

「ーーー嘘、でしょ?」

ヴェネディクトの視線も表情も口調も態度も、どれを取っても真実を話していると分かるのに馬鹿みたいに聞いてしまった。