どうして窪田くんがそんなこと言うか、理解できない。
「わたし。君に助けてもらえるようなことしたかな」
 なんで、そんなに優しくしてくれるの?
「はい」
「……いつ?」
「2年前の学祭で。料理部はカレーを売っていましたね」
「え、うん。でも。なんでそれを」
 窪田くんが、知ってるの……?
「俺。来てたんスよ」
 ――――!
「姉に誘われて。気の進まないまま、校舎をウロついてたら」

 ――カレー、いかがですか?

「看板持った先輩が、俺に声をかけてきました」
「そうだったの!?」
「覚えてないですね」
「いろんな人に声かけてたからなぁ」
「俺はそのとき。この人、バカなのかと思いました」
「は?」
「カレーの売り子くらいで。インドの民族衣装着て」
 そういえば着てたなぁ。
「お祭りとかイベントとか。俺、まったく興味なかったんスけど」
 そういう窪田くんが、うつむいて、
「うちのカレーは幸せな味ですって。言われて」
 小さく、はにかんだ。

「バカバカしいのに。食いたくなって」
「食べてくれたの!?」
「食いましたよ」
「どうだった?」
「至って普通ですね」
「そ、そっか」
「でも。ご飯がハートの形をしてて」
「そうなんだよね。そうすれば可愛いかなって、わたしが発案してオッケーしてもらえて……」
「聞きました。今売り子に出てる一年生のアイデアだと、販売してる人から」
 …………!
「センパイには。センパイの得意なことがあるじゃないですか」
「……っ」
「誰がなんといおうと。俺はそれがセンパイの魅力だと思ってますし」
「…………窪田くん?」
「どうして俺が。料理の腕に自信持ててるかわかりますか」