「お願いだから彼氏気取りしないでよ」


アタシと居たら、きっと杉野くんが傷つくよ?


だってアタシは、本気で恋愛なんてしないから。


それでもアタシと居るなら遊びで付き合ってしまうんだよ?


アタシだってそんな事したくないから、傷つく前にアタシから離れてよ。


時間を確認すると、下校時間を過ぎてる。


帰らなくちゃ…


お腹もペコペコだし、コンビニに寄っていかないと。


この場から離れようとしたら、杉野くんに止められる。


「祐華、そんなに嫌?」


「じゃあ聞くけど、どんな気持ちでアタシに関わってるの?」


杉野くんは真剣な顔でアタシを見つめてきた。


「俺、真剣なんだけど」


どうして、何の接点もないアタシにそこまで真剣なの?


「アタシたち、何の接点もないんだよね。なのにどうして…」


「一目惚れ」


「そうなんだ…」


一目惚れって、相手を良く知らないのに好きになってしまうってことだよね…?


「祐華を見かけた瞬間、この人だ!って思った」


ふわりと優しく微笑む。


良く見てみたら、茶色の髪は綺麗にセットされ、彼の動きに合わせてふわりと揺れる。


柔らかい笑顔が印象的で、優しいオーラが全面に溢れていた。



まっ、この人はタイプじゃないしね。


ちょっとカッコいいと思ったけど、アタシに付きまとうあたり好かない。



「じゃあここで。さようなら」


ニコッと笑みを作り、この場を立ち去ろうとした時に、


杉野くんは思い出したように声をあげる。



「初めましてさんって、どんな関係?」


まだ言ってるんですか…



「川嶋健永のこと?」



杉野くんの後ろからもう一人。


「おーい。祐華、何してんの?」


「あっ、健永くん!ごめん、帰ろ」


「またお前かよ。関わるなって言ったんだろ」



「何で関わっちゃダメなの?」


「ちょっ、ちょっと待って…!健永くんは幼馴染で、杉野くんは同じ学校の生徒ってことで。喧嘩しないでよ」



アタシは言い合いになりそうな2人に制止の言葉をかけた。