「はいはい。で、隣にいる子は神谷直哉」
大好きな健永くんに集中で、隣にいる健永くんの友達の存在に気づかなかったよ…
健永くんに紹介されると…
「お前、誰?」
はい? いや、初対面の人に"お前、誰?"ってのはまずはないでしょ!
「こいつは、俺の幼馴染の河野祐華」
ビックリしすぎて何も言えないアタシの代わりに健永くんが紹介してくれた。
ほら、流石の幼馴染くん。
「ふーん。てっきり彼女かと思った」
そんな風に言われるのはいつもの事だから慣れてる。
「無理に決まってるっ!健永くんは猿にしか見えないから」
健永くんのあだ名は昔から"猿"だった。
「静かにしろよ、声でかっ」
今日で初めて会ったのに、荒い言い方…
「何よ」
「まあまあ、俺たちも買ってくるから席取っといて」
健永くん…空気読めてるじゃん。たまにはね!
いつもなら空気読めないんだから。
「はーい」
ていうか、神谷くん?イケメンやん…
彼女おるかなぁ…?
いや、そんなのどうでもいい!
一目惚れとかふざけないでよ。
「一目惚れ?」
「やっぱりそうなる…?って葵!?」
「あははっ。お待たせ」
「葵だよね?ここでバイトしてるの、知らなかった」
「ここでバイトしたら、祐華に会えるかなーって思って。ほら祐華の最寄駅でしょ?」
「葵…会いたかった」
「私も会いたかった。黙って転校してごめんね。携帯も変えて、連絡先も消えてしまって…本当にごめん。あんな事件を起こして学校に居づらくて…」
「ううん。転校のことはショックだった。でもまたこうやって会えたんだから許してあげる!」
「ふふっ、ありがとう」
「高校も一緒に通いたかったな…」
「うん、ごめんよ」
「学校が違っても、会えるよね?」
「もちろんよ!LINE交換しようよ」
「うん!」
「あの人、一目惚れなんでしょ?」
「ち、違うから!だって言い方が荒いもん」
「ふーん」
ほんの少しカッコ良いと思ったのはホントよ。
でも好きとかそういうのはないからね!
一目惚れはただの思い込み!
うん、これで良し。
「あれ、葵か?」
「久しぶりね!相変わらずチャラいね」
「うっせーよ!お前のせいで、祐華がどんだけ泣いたか分かってんのか?」
「健永くん!葵を責めないでよ!」
「あ、すまん。元気そうで良かったわ」
「元気!私はもう大丈夫だから」
虐めに遭って転校したぐらい苦しかったにも関わらず、転校先で楽しくやっているのか、今の葵はとても輝いていた。
葵と再会して…
4人でいる時間が増えていった。
でもこの時間は長くは続かなかった。
アタシのすぐ側にいるこの2人に出会った為だ。
ここから、本格的な始まりだった…
そう、アタシに神谷くんが現れてから可笑しくなった。
いや、葵と再会してから可笑しくなった。
