「でも俺先生には敬語使っちゃうけどな。やっぱ十違うとタメ口利くのなんか違うなーって思うし」
日向くんは口を尖らせると、紅茶をあおった。先生はぼくもそんなに気にしていないよ、と肩をすくめてから笑った。葵くんはため息をついて、甘ったるそうなミルクティーを啜った。
「……ヒーローが減りすぎて色んな取り決めがなあなあにされている」
声変わりしきっていないけれど、高くはなく落ち着いた葵くんの声には妙な深みがあった。そう遠くはない過去に、ヒーローが減るような激しい戦い――あるいは大きな事件が起こったのだろう。だとすれば、日向くんや先生は分からないが、少なくとも葵くんはそれを乗り越えている。
「ど、どうして、ヒーロー……さんたちは、減っちゃった、の?」
鋭い眼光で私を一瞥すると、葵くんは淡々と述べた。
「それはちえりがヒーローになってから伝える。イプシロンでしかない君を完全に信用してよいか、まだ判断しかねるからな。すまないけれど、これに悪意はない。日向の時もそうした」
イプシロンの状態からヒーローにならなくてもいい、というのは先生からも聞いている。そこまで深入りできるのは向き合える覚悟がある者だけということか。
「あの、能力……分からないと、ヒーローに、なれないって……聞いたんですけど、どうやって、能力を……当てるんですか」
「能力を、当てる?」
葵くんは目を細めて笑った。話し方は大人のようだが、笑顔はまだ幼い子供そのものだ。
「能力は使ってみないと分からない。ああ、さすがにいきなりベータレイヤーであいつらと戦えとは言わないが」
私の能力は先生のように直接戦力になれない能力である確率の方が高いだろう。しかし、私の意思で今のところ直接制御できる能力でもない。使ってみる、ということすら難しい。
「――僕に考えがある。日向、ちえり、着いてきてくれ」
葵くんに従って、私と日向くんは藤本医院を後にした。
日向くんは口を尖らせると、紅茶をあおった。先生はぼくもそんなに気にしていないよ、と肩をすくめてから笑った。葵くんはため息をついて、甘ったるそうなミルクティーを啜った。
「……ヒーローが減りすぎて色んな取り決めがなあなあにされている」
声変わりしきっていないけれど、高くはなく落ち着いた葵くんの声には妙な深みがあった。そう遠くはない過去に、ヒーローが減るような激しい戦い――あるいは大きな事件が起こったのだろう。だとすれば、日向くんや先生は分からないが、少なくとも葵くんはそれを乗り越えている。
「ど、どうして、ヒーロー……さんたちは、減っちゃった、の?」
鋭い眼光で私を一瞥すると、葵くんは淡々と述べた。
「それはちえりがヒーローになってから伝える。イプシロンでしかない君を完全に信用してよいか、まだ判断しかねるからな。すまないけれど、これに悪意はない。日向の時もそうした」
イプシロンの状態からヒーローにならなくてもいい、というのは先生からも聞いている。そこまで深入りできるのは向き合える覚悟がある者だけということか。
「あの、能力……分からないと、ヒーローに、なれないって……聞いたんですけど、どうやって、能力を……当てるんですか」
「能力を、当てる?」
葵くんは目を細めて笑った。話し方は大人のようだが、笑顔はまだ幼い子供そのものだ。
「能力は使ってみないと分からない。ああ、さすがにいきなりベータレイヤーであいつらと戦えとは言わないが」
私の能力は先生のように直接戦力になれない能力である確率の方が高いだろう。しかし、私の意思で今のところ直接制御できる能力でもない。使ってみる、ということすら難しい。
「――僕に考えがある。日向、ちえり、着いてきてくれ」
葵くんに従って、私と日向くんは藤本医院を後にした。
