「誰かを全力で愛す…か。」
アレクさんが隣でボソッと呟く。
「えっ、いや、そ、それは…勢いっていうか…つい…」
後々自分の発言が恥ずかしくなる。
「いいんじゃないか?」
そんな風に言ってもらえるとは思っていなかった。
「そ、そう言ってもらえると嬉しいです。」
「よくもまぁ大勢ってほどじゃないけど、人前でそんな恥ずかしいこと言えるよね。」
ナツメさんがグサッとくることを言う。
知ってますよ、私も今さっき自覚しましたから!
「僕は素敵だと思うけどなぁ〜」
カイラさんは机に肘をついて天井を見上げる。
「クロウは?」
アレクが尋ねる。
「よくもまぁ、めんどくさいことをクロエに教えやがったな…」
えっ!?
そんな風に言われるなんて…。
「でも、クロエちゃんの気持ちもわかってあげないと!!」
ついムキになって言い返す。
「関係ないだろ。」
冷静に返される。
そ、そうだけど…。
ていうか、なんで私はムキになっているのだろう。
こんなの、面倒なことになるに決まっている、そうわかっているのにやめられない。
「それに、クロエには見合いの話が飛び交っているからな。すべて断っているらしいが、お母様がそろそろ決めるようにとも言っているし…。
お兄様お兄様言ってられるのは今のうちだけだ。」
そ、そんな……。
クロエちゃん、元気そうだったのに、本当に好きな人じゃない人だなんて…。
だからと言ってやっぱりクロウさんは妹には幸せになって欲しいのかな?
自分じゃなくて、もっと自分よりいいやつを!みたいな…
「く、クロウ…」
アレクさんが目を見開いて固まってしまっている。
「お、お、お、お前…女嫌いなのに、樹里と会話できてんじゃねぇか!!
結構話せていたぞっっ」
た、確かに…。
でも、なぜ今そこに気づく…。
ここに住んでる人みんな、変わってる人が多いなんて思う。
なんというか、個性的だ。
するとクロウさんは我に返ってたかのように「ごちそうさま。」と言って席を立った。
「あのっ、部外者のくせに…ごめんなさい。」
私はせめてと思い謝った。
しかし、クロウさんは私の横をスッと通り過ぎて階段を上って行ってしまった。
やっぱり私は引きこもっておいた方がいいんだな。
買い物行ったらもう引きこもろうかな、食べ物をある程度用意しとけば…。
これ以上迷惑かけたくないし、だからと言って家出はできないからこもっておこう。
それで、何もせずにいれば…。
「…大丈夫か?」
アレクさんが心配してくれる。
こんな私を。
「…はい。」
「気晴らしに…今から行くか!買い物」
そう言ってアレクさんはニカッと笑って私の腕を掴む。
「えっ、ちょっ」
私は腕を掴まれたまま、外へ連れ出される。
そして、馬車に乗り込む。
ば、馬車?
やっぱりここは私のいた世界ではない…。
馬車の中で一息つく。
「悪いな、強引に連れてきて。」
そう言ってアレクさんが頭をポリポリとかく。
「いえ、全然。」
「あの、私…お金持ってないんですけど、どうすればよいでしょうか…。」
これに限ってはほんとにどうすればいいのかわからない。
さすがに払わせるわけにはいかない。
でも、お金はないし…。
「気にするな、全部払っておく」
普通だとでも言うようにそう言われた。
「で、でもさすがに…」
「大丈夫だ。」
大丈夫と言われても…と思ったけど、それでアレクさんがオーケーを出してくれるようにも思えない。
「そ、それじゃあ…」
安めの物を買おう。
そうこうしていると、「ついたぞ」と言われた。
見る限り、普通のデパートだ。
結構…大きいけど…。
そして、私たちは中へ入っていった。
「わぁぁぁ」
中は普通のデパートとは少し違った。
機械が多い。
ほとんどの人がスケートボードのようなものに乗っておりそれは宙に浮いていた。
また、飲食店を覗くと、机が光り、画面のようになる。
そこにお客さんがメニューをタップして注文しているのだ。
す、すごい…
私が感心しているとアレクさんが
「まずは、衣服か?」
と言う。
「あ、は、はい。」
私はテクテクとアレクさんの後ろをついて歩く。
とは言っても見たことのないものがいっぱいで気になる。
「何キョロキョロしてんだ?」
「えっ!?
い、いや…その、見たことないものがたくさんあって…」
「こんなもの普通だが?」
これが普通とはすごく進歩しているな…
そう言ってエスカレーターのようなもの乗って上の階に上がる。
エスカレーターのようだけど、空間があるし、左右に持つところがまずない。
乗っているところも半透明だ。
オシャレだけど、落ちそうで怖いな…。
「好きなように見ているといい」
私は数ある服屋さんの中でなんとなく気に入った店に入った。
私が入った店は女の子っぽく、ピンク系統が多く、ふんわりした感じの店だ。
私はてきとうにふらふら店内を回る。
か、か、可愛い!
私の目に留まったのは白をベースにしたワンピースで、薄ピンクのスカートがふんわりと広がっていた。
袖の部分はひらひらしていて、鎖骨あたりの部分はレースになっている。
「気に入ったのか?」
後ろからアレクさんが現れる。
いきなりの登場に少し驚くが、「はい。」と答える。
私は気になりチラッと値札を見る。
んんんんん!?
た、た、高い…ものすごく…。
いくら私がお金を持っていたって小遣いじゃ足りない。
「あ、あ、アレクさん…。
やっぱり…やめます…」
「どうした?なぜだ?」
「…お金が…高いから、です…。」
私が素直にそういうとアレクさんは値札を見る。
「こんなの安い方だ。」
サラリと告げられ、私は固まる。
も、もしかして、アレクさんってお金持ち?
一般市民の私からはそんなこと言えない。
でも、よくよく考えたらあの大きな屋敷を持っている時点でお金持ちだ。
「で、でも…」
流石にこんな大金払わせられるわけがない。
「ほら、他のも見てこい。」
そう言ってアレクさんはワンピースを手に取る。
「あ…、は、はい…」
私はそう言って、他の場所も見に行った。
安めのやつにしよう!!
私は値札も含めてじっくりと見るようにした。
でも、どれを見ても安い!と言うものがない。
もしかしてここ、高級な店とかだった?
私は少し気になって隣の店を覗く。
値札を見るが、そちらも高い。
このデパート自体が高級なんじゃ…
私の脳裏にそんなことが浮かぶ。
ありえる。
私は周りの人を見てみる。
高級そうな服やアクセサリーを身につけている。
なんで、入った時に気づかなかったのだろう。
でも、今更帰ることはできないし…。
これじゃあ安いものを選ぶとか無理じゃん…。
もう値段は気にせず買ってしまおう。
私は再び店内を眺める。
このブラウス可愛いなぁ〜
大きなリボンが特徴的だ。
カチューシャやリボンもいい…。
こんなに可愛いと迷っちゃうな〜。
「楽しそうだな。
ならこれも買うか。」
アレクさんがまたどこからか現れ、私が見ていたものをどんどん取っていく。
これは抵抗しても無駄だな。
私は諦めて次を見ることにした。
でも、こうやって買い物とかするの何年ぶりだろう。
引きこもってばかりで、何にもやってないな…。
この世界なら、私ができなかったことができる。
そんな気がした…。
「おい、樹里。
これはどうだ?似合うと思うぞ」
アレクさんの元へ私は速歩きで向かう。
そう言ってアレクさんが持っていたのはワインレッドのワンピースだった。
可愛い、というかオシャレというか、大人っぽいというか…。
とにかくステキな服だった。
アレクさんは腕を伸ばし、ワンピースを私に合わせる。
「よし、いいな。」
そう言ってアレクさんはそのワンピースも買う気なのか笑顔で頷いた。
「あ、アレクさん。
こんなにもあれば十分です。」
「そうか。
なら、買うとしよう。」
そう言ってアレクさんはレジに向かった。
たくさん買ってもらっちゃったな…
アレクさんは私の元に戻ってきて、
「そろそろ昼だし、何か食べていうか?」
と言った。
私は頷いて、近くのピザ屋さんに向かった。
「ちょうどお腹減ってたんです。
それに、私ピザ大好物なので嬉しいですっ!」
私が頼んだのはチーズとコーンと蜂蜜とツナのピザだ。
このピザがまさかここにもあるだなんて、ちょっと違うけど、味は同じだった。
「おいふぃ〜♡」
アレクさんはマルゲリータを食べていた。
私、そういえばこのピザばっかりでマルゲリータ、食べたことなかったな…。
他のピザもほとんどない。
私の視線に気付いたのかアレクさんがこちらをみる。
「食べたいのか?」
「え、いや、その…
食べたことないから、気になって…」
「なら、食べるか?」
アレクさんはピザを私の口元へ運ぶ。
私は無意識に口を開けてパクっと食べていた。
こ、これって…「あーん」というやつでは!?
さっきから頭が働くまで時差が生じる。
「味はどうだ?」
アレクさんは不安そうに私の顔を覗き込む。
「お、おいふぃいでふっっ!
私のもどうぞ」
そう言って私たちはお互いのピザを交換した。
「ごちそうさまでした」
食べ終わったけど、このまま帰るのはちょっと寂しいな…なんて思ってしまう。
いつもなら、帰りたいと思うぐらいなのに。
♚✞♚
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「はぁ、誰だよめんどくさいなぁ…」
ナツメは嫌々扉を開ける。
「お邪魔します!
アレクはいる?」
扉が開くなりいきなり入ってきたのは赤髪のツインテールの少女だった。
「ゲッ…
残念だけど、今はいないよ。」
「本当ですかぁ?」
怪しそうに見つめる少女。
「本当だよ。なんで僕が嘘をつかなきゃいえないわけ?
多分いつものデパートだと思うよ。買い物って言ってたし…」
ナツメの言葉が言い終わらないうちに少女は即座に出て行った。
♚✞♚
昼食の後は本屋に立ち寄り、私は色々と見て回る。
よくわからない本が沢山あるな…
逆に私の知っているものなんてない。
「そういえば、アレクさんは作家さんなんですよね?」
「あ、あぁ。」
「いま、発売されているものってどこにありますか?」
つい気になってそう尋ねる。
「そこだ」
そう言ってアレクさんが指をさしたところには《今一番売れてる本!》とかかれていた。
そこには同じ本が何冊も積み上げられていた。
もしかして…これ?
私は近寄り、手に取る。
作者を見るとアレクと書いてあった。
私がアレクさんの方を見ると顔を赤くして目を背けていた。
どんな内容なのか気になりあらすじを読む。
ざっくり訳すと結婚式間近の女の子が事故に遭い記憶喪失になってしまう、そんな話だった。
恋愛ものなのかな?
「アレクさんが恋愛モノを書くなんて想像つきませんでした。」
「俺もよく書けたと思うよ」
そう言ってアレクさんは笑う。
「この本欲しいです。」
「は!?」
「だって気になりますもん、アレクさんのお話。」
アレクさんはため息をつきながらも、少し嬉しそうだった。
アレクさんが隣でボソッと呟く。
「えっ、いや、そ、それは…勢いっていうか…つい…」
後々自分の発言が恥ずかしくなる。
「いいんじゃないか?」
そんな風に言ってもらえるとは思っていなかった。
「そ、そう言ってもらえると嬉しいです。」
「よくもまぁ大勢ってほどじゃないけど、人前でそんな恥ずかしいこと言えるよね。」
ナツメさんがグサッとくることを言う。
知ってますよ、私も今さっき自覚しましたから!
「僕は素敵だと思うけどなぁ〜」
カイラさんは机に肘をついて天井を見上げる。
「クロウは?」
アレクが尋ねる。
「よくもまぁ、めんどくさいことをクロエに教えやがったな…」
えっ!?
そんな風に言われるなんて…。
「でも、クロエちゃんの気持ちもわかってあげないと!!」
ついムキになって言い返す。
「関係ないだろ。」
冷静に返される。
そ、そうだけど…。
ていうか、なんで私はムキになっているのだろう。
こんなの、面倒なことになるに決まっている、そうわかっているのにやめられない。
「それに、クロエには見合いの話が飛び交っているからな。すべて断っているらしいが、お母様がそろそろ決めるようにとも言っているし…。
お兄様お兄様言ってられるのは今のうちだけだ。」
そ、そんな……。
クロエちゃん、元気そうだったのに、本当に好きな人じゃない人だなんて…。
だからと言ってやっぱりクロウさんは妹には幸せになって欲しいのかな?
自分じゃなくて、もっと自分よりいいやつを!みたいな…
「く、クロウ…」
アレクさんが目を見開いて固まってしまっている。
「お、お、お、お前…女嫌いなのに、樹里と会話できてんじゃねぇか!!
結構話せていたぞっっ」
た、確かに…。
でも、なぜ今そこに気づく…。
ここに住んでる人みんな、変わってる人が多いなんて思う。
なんというか、個性的だ。
するとクロウさんは我に返ってたかのように「ごちそうさま。」と言って席を立った。
「あのっ、部外者のくせに…ごめんなさい。」
私はせめてと思い謝った。
しかし、クロウさんは私の横をスッと通り過ぎて階段を上って行ってしまった。
やっぱり私は引きこもっておいた方がいいんだな。
買い物行ったらもう引きこもろうかな、食べ物をある程度用意しとけば…。
これ以上迷惑かけたくないし、だからと言って家出はできないからこもっておこう。
それで、何もせずにいれば…。
「…大丈夫か?」
アレクさんが心配してくれる。
こんな私を。
「…はい。」
「気晴らしに…今から行くか!買い物」
そう言ってアレクさんはニカッと笑って私の腕を掴む。
「えっ、ちょっ」
私は腕を掴まれたまま、外へ連れ出される。
そして、馬車に乗り込む。
ば、馬車?
やっぱりここは私のいた世界ではない…。
馬車の中で一息つく。
「悪いな、強引に連れてきて。」
そう言ってアレクさんが頭をポリポリとかく。
「いえ、全然。」
「あの、私…お金持ってないんですけど、どうすればよいでしょうか…。」
これに限ってはほんとにどうすればいいのかわからない。
さすがに払わせるわけにはいかない。
でも、お金はないし…。
「気にするな、全部払っておく」
普通だとでも言うようにそう言われた。
「で、でもさすがに…」
「大丈夫だ。」
大丈夫と言われても…と思ったけど、それでアレクさんがオーケーを出してくれるようにも思えない。
「そ、それじゃあ…」
安めの物を買おう。
そうこうしていると、「ついたぞ」と言われた。
見る限り、普通のデパートだ。
結構…大きいけど…。
そして、私たちは中へ入っていった。
「わぁぁぁ」
中は普通のデパートとは少し違った。
機械が多い。
ほとんどの人がスケートボードのようなものに乗っておりそれは宙に浮いていた。
また、飲食店を覗くと、机が光り、画面のようになる。
そこにお客さんがメニューをタップして注文しているのだ。
す、すごい…
私が感心しているとアレクさんが
「まずは、衣服か?」
と言う。
「あ、は、はい。」
私はテクテクとアレクさんの後ろをついて歩く。
とは言っても見たことのないものがいっぱいで気になる。
「何キョロキョロしてんだ?」
「えっ!?
い、いや…その、見たことないものがたくさんあって…」
「こんなもの普通だが?」
これが普通とはすごく進歩しているな…
そう言ってエスカレーターのようなもの乗って上の階に上がる。
エスカレーターのようだけど、空間があるし、左右に持つところがまずない。
乗っているところも半透明だ。
オシャレだけど、落ちそうで怖いな…。
「好きなように見ているといい」
私は数ある服屋さんの中でなんとなく気に入った店に入った。
私が入った店は女の子っぽく、ピンク系統が多く、ふんわりした感じの店だ。
私はてきとうにふらふら店内を回る。
か、か、可愛い!
私の目に留まったのは白をベースにしたワンピースで、薄ピンクのスカートがふんわりと広がっていた。
袖の部分はひらひらしていて、鎖骨あたりの部分はレースになっている。
「気に入ったのか?」
後ろからアレクさんが現れる。
いきなりの登場に少し驚くが、「はい。」と答える。
私は気になりチラッと値札を見る。
んんんんん!?
た、た、高い…ものすごく…。
いくら私がお金を持っていたって小遣いじゃ足りない。
「あ、あ、アレクさん…。
やっぱり…やめます…」
「どうした?なぜだ?」
「…お金が…高いから、です…。」
私が素直にそういうとアレクさんは値札を見る。
「こんなの安い方だ。」
サラリと告げられ、私は固まる。
も、もしかして、アレクさんってお金持ち?
一般市民の私からはそんなこと言えない。
でも、よくよく考えたらあの大きな屋敷を持っている時点でお金持ちだ。
「で、でも…」
流石にこんな大金払わせられるわけがない。
「ほら、他のも見てこい。」
そう言ってアレクさんはワンピースを手に取る。
「あ…、は、はい…」
私はそう言って、他の場所も見に行った。
安めのやつにしよう!!
私は値札も含めてじっくりと見るようにした。
でも、どれを見ても安い!と言うものがない。
もしかしてここ、高級な店とかだった?
私は少し気になって隣の店を覗く。
値札を見るが、そちらも高い。
このデパート自体が高級なんじゃ…
私の脳裏にそんなことが浮かぶ。
ありえる。
私は周りの人を見てみる。
高級そうな服やアクセサリーを身につけている。
なんで、入った時に気づかなかったのだろう。
でも、今更帰ることはできないし…。
これじゃあ安いものを選ぶとか無理じゃん…。
もう値段は気にせず買ってしまおう。
私は再び店内を眺める。
このブラウス可愛いなぁ〜
大きなリボンが特徴的だ。
カチューシャやリボンもいい…。
こんなに可愛いと迷っちゃうな〜。
「楽しそうだな。
ならこれも買うか。」
アレクさんがまたどこからか現れ、私が見ていたものをどんどん取っていく。
これは抵抗しても無駄だな。
私は諦めて次を見ることにした。
でも、こうやって買い物とかするの何年ぶりだろう。
引きこもってばかりで、何にもやってないな…。
この世界なら、私ができなかったことができる。
そんな気がした…。
「おい、樹里。
これはどうだ?似合うと思うぞ」
アレクさんの元へ私は速歩きで向かう。
そう言ってアレクさんが持っていたのはワインレッドのワンピースだった。
可愛い、というかオシャレというか、大人っぽいというか…。
とにかくステキな服だった。
アレクさんは腕を伸ばし、ワンピースを私に合わせる。
「よし、いいな。」
そう言ってアレクさんはそのワンピースも買う気なのか笑顔で頷いた。
「あ、アレクさん。
こんなにもあれば十分です。」
「そうか。
なら、買うとしよう。」
そう言ってアレクさんはレジに向かった。
たくさん買ってもらっちゃったな…
アレクさんは私の元に戻ってきて、
「そろそろ昼だし、何か食べていうか?」
と言った。
私は頷いて、近くのピザ屋さんに向かった。
「ちょうどお腹減ってたんです。
それに、私ピザ大好物なので嬉しいですっ!」
私が頼んだのはチーズとコーンと蜂蜜とツナのピザだ。
このピザがまさかここにもあるだなんて、ちょっと違うけど、味は同じだった。
「おいふぃ〜♡」
アレクさんはマルゲリータを食べていた。
私、そういえばこのピザばっかりでマルゲリータ、食べたことなかったな…。
他のピザもほとんどない。
私の視線に気付いたのかアレクさんがこちらをみる。
「食べたいのか?」
「え、いや、その…
食べたことないから、気になって…」
「なら、食べるか?」
アレクさんはピザを私の口元へ運ぶ。
私は無意識に口を開けてパクっと食べていた。
こ、これって…「あーん」というやつでは!?
さっきから頭が働くまで時差が生じる。
「味はどうだ?」
アレクさんは不安そうに私の顔を覗き込む。
「お、おいふぃいでふっっ!
私のもどうぞ」
そう言って私たちはお互いのピザを交換した。
「ごちそうさまでした」
食べ終わったけど、このまま帰るのはちょっと寂しいな…なんて思ってしまう。
いつもなら、帰りたいと思うぐらいなのに。
♚✞♚
ピンポーン
チャイムが鳴る。
「はぁ、誰だよめんどくさいなぁ…」
ナツメは嫌々扉を開ける。
「お邪魔します!
アレクはいる?」
扉が開くなりいきなり入ってきたのは赤髪のツインテールの少女だった。
「ゲッ…
残念だけど、今はいないよ。」
「本当ですかぁ?」
怪しそうに見つめる少女。
「本当だよ。なんで僕が嘘をつかなきゃいえないわけ?
多分いつものデパートだと思うよ。買い物って言ってたし…」
ナツメの言葉が言い終わらないうちに少女は即座に出て行った。
♚✞♚
昼食の後は本屋に立ち寄り、私は色々と見て回る。
よくわからない本が沢山あるな…
逆に私の知っているものなんてない。
「そういえば、アレクさんは作家さんなんですよね?」
「あ、あぁ。」
「いま、発売されているものってどこにありますか?」
つい気になってそう尋ねる。
「そこだ」
そう言ってアレクさんが指をさしたところには《今一番売れてる本!》とかかれていた。
そこには同じ本が何冊も積み上げられていた。
もしかして…これ?
私は近寄り、手に取る。
作者を見るとアレクと書いてあった。
私がアレクさんの方を見ると顔を赤くして目を背けていた。
どんな内容なのか気になりあらすじを読む。
ざっくり訳すと結婚式間近の女の子が事故に遭い記憶喪失になってしまう、そんな話だった。
恋愛ものなのかな?
「アレクさんが恋愛モノを書くなんて想像つきませんでした。」
「俺もよく書けたと思うよ」
そう言ってアレクさんは笑う。
「この本欲しいです。」
「は!?」
「だって気になりますもん、アレクさんのお話。」
アレクさんはため息をつきながらも、少し嬉しそうだった。