二人が席につくと、控えていた楽師たちが静かに曲を奏で始める。流れてきた曲の中には、ローズの弾いていた曲もあった。もちろんトラヴェルソもそこにはいたが、ローズの耳にしたあの音ではない。

(ここの楽師ではないのかしら)

 考えながら食事をしていると、ぽつりぽつりとレオンが話しかけてくる。

「芝居は好きか?」

「ええ。レオン様は、お好きなのですか?」

「いや、あまり見ないな」

「そうですか」

 レオンから話しかけてくる割には、会話が続かない。その後も、流行の踊りや歌などのことを話題にするが、レオンもあまり詳しくないようで話が弾まないことこの上ない。

(無理して話題を作らなくてもいいのに)

 不思議に思いながらローズが最後のデザートを食べ終わる頃、レオンが何かエリックに合図を送った。小さく頷くと、エリックは部屋の隅にあった箱の一つに手を伸ばす。

「こちらを。レオン様からです」

 渡されたのは、長細い箱だった。開けてみると、大きな赤い宝石の首飾りが入っている。