『お目覚めですか、奥様』

 ちょうどローズが目覚めたタイミングで、部屋の外から声がかけられた。館の使用人たちは、すでにローズのことを奥様と呼んでいた。

「は、はい」

「おはようございます。お召替えのお手伝いをいたします」

 入ってきたのは、カーライル家のメイドたちだ。

「いえ、私は……」

 自分で着替えようとしたローズは、不思議そうな顔をするメイドたちを見て気づいた。

(そうだ。お嬢様は、自分で着替えなんかしないんだったっけ)

 ベアトリスは伯爵令嬢だ。彼女の着替えは、毎朝ローズをはじめ多数のメイドが手伝っていた。

 ローズはベッドから優雅に降りると、すました顔でメイドに言った。

「お願いします」

「かしこまりました」

「奥様、今朝のお食事はどこでいたしましょう」

 また別のメイドが聞いてくる。