「花の中では、ピンク色が一番好きです」

 顔を逸らしたままだったので、無言になったレオンがどういう顔をしていたのか、ローズには知ることができなかった。

 短い沈黙のあと、淡々としたレオンの声が聞こえた。

「夕食はこちらに運ばせる。今日はゆっくり休むといい」

「お気遣い、恐れ入ります」

 その会話を最後に、レオンは部屋を出て行った。

 ふう、と息を吐いてようやくローズは緊張を解く。

 まさか、こんな風にベアトリスの身代わりをすることになろうとは思ってもいなかった。これが原因で破談にでもなったらどう責任をとればいいのか。