「いっそのこと孕ませるか?」

「いや、マジトーンで言うなよ」

「本気だけど?」

「「「………」」」


未衣、今すぐ湊から離れろ。今のコイツは危険だ


「あいつすぐ逃げるだろ?不安なんだよ…」


まぁ、不安になる気持ちも分からなくはない


俺たちの知らない顔をまだまだたくさん持つ未衣は、側にいるはずなのに遠くて、目を離すとすぐ何処かへ逃げていく


猫のようにどこまでも自由で、掴み所がない


「ならいっその事、ガキでも作って縛りつければ離れねえかなって」

「アホか辞めろ」


依存しすぎだろ

思わずツッこんだが、海も陸もドン引きしている


「何度も逃げられちゃ俺だってさすがにしんどい」

「…ご愁傷様」


溜息を吐く湊の苦労は分かるっちゃ分かる


一昨年は突然実家に帰り行方不明、
去年は仕事に抗争に喧嘩で音信不通、
この間は片山八弥との浮気疑惑からの湊拒絶

俺たちのお姫様は少々厄介だ


そして毎回荒れ狂う湊を抑える俺たちも相当骨が折れる


「今年も、なにかありそうな予感」


なんて言ってたのが、まさか本当になるとはこの時俺たちは考えてすらなかった