眠り姫と総長様 Ⅲ



「なに?言ってくれないと伝わらない」


一度引っ込んだ細い手首を、ぐいっと胸元に引き寄せる


ふわりと香る未衣の優しくて甘い匂いが鼻腔を掠めた


「は、なし…」

「また、逃げるだろ?」


捕まえたと思っても、スルリと簡単に腕の中を通り抜けてく

いつも、いつもそうだ


「八弥さん、こいつ今日貰ってきます」

「くすっ。お好きにどうぞ」

「え!?湊下ろして!」

「失礼します」


ヒョイっと小さい身体を肩に担ぐと暴れ始めたが気にしない

元々今日はこの予定だったんだ

八弥さんは、そんな俺の行動を分かってたかのように楽しそうに見ていた


「未衣、仕事は気にしないで話し合いな」

「はっちゃん!」

「明日の夜までにちゃんと返してね」

「分かってます」

「んじゃ、楽しんで」


そう言って背を向けて歩き出した八弥さんを確認して、俺たちも歩き始めた

未衣は大人しく担がれている