「なに?言ってくれないと伝わらない」
一度引っ込んだ細い手首を、ぐいっと胸元に引き寄せる
ふわりと香る未衣の優しくて甘い匂いが鼻腔を掠めた
「は、なし…」
「また、逃げるだろ?」
捕まえたと思っても、スルリと簡単に腕の中を通り抜けてく
いつも、いつもそうだ
「八弥さん、こいつ今日貰ってきます」
「くすっ。お好きにどうぞ」
「え!?湊下ろして!」
「失礼します」
ヒョイっと小さい身体を肩に担ぐと暴れ始めたが気にしない
元々今日はこの予定だったんだ
八弥さんは、そんな俺の行動を分かってたかのように楽しそうに見ていた
「未衣、仕事は気にしないで話し合いな」
「はっちゃん!」
「明日の夜までにちゃんと返してね」
「分かってます」
「んじゃ、楽しんで」
そう言って背を向けて歩き出した八弥さんを確認して、俺たちも歩き始めた
未衣は大人しく担がれている


