パシッ
八弥さんの顔面に拳が当たる直前、俺と八弥さんの間にいつの間に入った未衣が
無情にも俺の拳を片手で止めた
「未、衣…?」
「騒ぎ、大きくなるからこれ以上辞めて。」
「……わかった」
感情の読めない、いつもならあり得ない抑揚のない声
久しぶりに触れた未衣の体温は、冷たかった
というか、拳を片手で止められた事に驚きを隠せない
野次馬がたくさん集まっているのを横目で確認して、俺は冷静になる為に2人から少し距離を取った
「さすがお嬢。お見事」
「分かってて挑発しないで」
「でも、これで高宮湊に全てを受け入れてもらえてない事が分かったでしょ?」
俺の言った通り、と未衣の唇に人差し指を置いた八弥さん
「……帰る」
「未衣仕事は?」
「今日はもういい。」
「あーあ。怒らせちゃった」
やばいなぁ、と少し焦ったように眉を下げた八弥さんは俺たちに背中を向けて歩き始めた未衣を追わなかった


