眠り姫と総長様 Ⅲ


「高宮湊でしょ。」


ビクッと身体が揺れた


「未衣を泣かせるなんてソイツ、なにしたの」

「……湊は、悪くない」

「未衣を泣かせたのは事実だ」

「……あたしが悪いの」


湊は悪くない

悪いのは、湊を不安にさせたあたし

誰だってあんな噂を聞いたら不安になるに決まってるし、怒るのは当たり前だ


「未衣が泣くなんてよっぽどの事でしょ」

「………」


頑なに首を横に振り続けるあたしに、ため息をついたはっちゃん


「少なくとも俺は、今までどんな辛い事があっても絶対泣かなかった未衣が今泣いてるって事実だけで充分だ」


今まで、涙なんて他人に見せなかった

この世界で生きる上で涙は邪魔だから

弱さの証拠みたいで嫌いだった

篠原未衣は、なにがあっても泣かなかった

冷酷、だなんて言われるのはそのせいかもしれない