「実は、まだ正式に決まってはないのですが数日前に湊とお見合いをしまして…」

「私は宮田の長から高宮が本命じゃないと聞いてるけど」

「えっ…?パパが?」

「あれ?知らなかった?舞の縁談の本命は古山組の次男坊だって言われたけど」

「でも私、湊のことがっ…」

「残念だけど、高宮の本命は昔から決まってるから諦めた方が身の為だよ」

「そ、んな……」


俺たちの知らない世界の話

どこまでが本当か分からないけど、女は何故だか未衣ちゃんの話を全て間に受けている


「私は舞の幸せを祈ってる」

「み、未衣様ぁ!!」


パァっと嬉しそうに未衣ちゃんに抱き着いた女に、もうなにがなんだか分からなかった


「今日はもう帰りな」

「そうしますわ!失礼致します未衣様」

「気をつけて」


嵐のように去っていった女


「湊、もう二度と来ないから大丈夫だよ?」


車に女が乗り込んだのを確認して、くるりと俺たちの方を向いた未衣ちゃんは

さっきと違っていつもの未衣ちゃんだった


「あの女と知り合いだったのか?」

「ん?同盟の組のお嬢は全員会ったことあるよ?」

「あんな従順に従うくらい仲良いのか?」

「……組のお嬢ってね、必ず教えられることがあるの。全国共通のルール」

「なんだそれ」



「"篠原未衣に逆らってはいけない"
"篠原未衣の言うことは絶対である"」



初めて見た未衣ちゃんのゾクリとする冷たい笑みに、俺たちはなにも言えなかった