「ねぇ湊ぉ、聞いてるのぉ?」
「触るんじゃねえ。気持ち悪ぃ」
パシン、と腕に巻きつこうとした女の腕を思いっきり振り払った湊
「痛いっ…!婚約者になにすんのよぉ!」
「あぁ!?勝手な事言ってんじゃねえぞ」
「だ、だってパパが湊の事婚約者に決めたってぇ…」
「ざけんじゃねえぞ」
「舞、湊の事好きになっちゃったんだもん!」
「俺はてめえみたいな女が嫌いだ」
「酷いっ!舞は湊と結婚するんだから!」
容赦なく突き放す湊と、泣き出す女
うわぁ…修羅場
湊ご愁傷様、心の中で手を合わせておいた
「行くぞ」
泣いてる女を無視して通り過ぎ、迎えの車に乗り込んだ湊は倉庫に着くなりシャワーを浴びに行った
「湊、あの女どうするわけ?」
「知るか」
「あの調子だと毎日来そうだぞ」
「………」
「未衣ちゃん明日倉庫来るよね?」
「未衣に手出したらあの女殺す」
「いやいやいやいや、もう少し穏便に済ませようか!」
「あ?」
イライラした湊に話が通じるわけもなく
「未衣ちゃん、きっと嫌な気持ちになるよね」
「俺たちが見てて気分悪いんだから未衣は悲しむだろうよ」
「あの女気が強そうだし、未衣ちゃんになにするかたまったもんじゃないね」
今ここに居ない未衣ちゃんの心配をしていた俺たちは、決定的なことを忘れていた


