そのあと私は突拍子のない行動をした彼を徹底的に無視した。
いや、怒ってるわけじゃないんだけど
「橘さんごめん。本当ごめん」
「下にアイス売ってるから買ってこようか?」
「なにしたら機嫌なおしてくれる…?」
七瀬くんが珍しくうろたえてるのが面白くて怒ってるふりをしているだけ。
うろたえてるの可哀相だけどかわゆい。
でもね、考えてみてよ。
さっき押し倒されたのが七瀬くんじゃなかったら。
恐ろしくない?
私は不覚にもキュンとしてしまったわけだけど。
ーーーーそうだよ!キュンとしちゃったよ!!
単純だよ!ばかだよ!わかってるよ!
大体あんなイケメンに押し倒されてキュンとしないほうがおかしいでしょうが!
綺麗なお顔が!目の前にどんっ!だよ!
だからこれくらいの意地悪は許してほしい。
ちなみに七瀬くん、このあと本当にアイスを買ってきてくれた。代わりに私もたんまりお菓子をあげた。チョコが好きらしく、チョコのお菓子を抱えてふにゃりと笑う七瀬くんは天使だった。
そしてミユたちが帰ってくる前に彼は部屋を出て行った。
ドキドキしたままベットに入り携帯を見ると七瀬くんからメールが来ていた。
内容はシンプルに『おやすみ』というものだった。
同じホテル内にいるのに、と少し可笑しくなったけど、わざわざ送ってくれたことになんだかくすぐったい気持ちになった。

