祭りの会場につけば、そこは人だらけの大賑わい。
浴衣を着ている人も多く、少し安堵した。

なぜなら私の隣には七瀬くんがいるのだ。

学校ではみんな同じ制服を着てるし、七瀬くんもあまり目立つ方ではないからわからなかったけれど、彼はものすごく人目を惹きつけるのだ。


ここに来るまでの間、どれだけの視線を浴びてきたか…。

当の本人はまるで気にしてないようだけれど。

だからほっと安堵したというのに。




「…あの浴衣着てる人かっこいいね」

「…ね。なんか洋画に出てきそう」


ダメでした。人混みだろうがなんだろうが、女子のイケメンセンサーは発動しまくりでした。


過ぎ去る人のほとんどが七瀬くんを一瞥していく。

中には二度見三度見する人まで。





「七瀬くん、お面買ってあげるから付けてみない?」

「え、なんで」

「…………似合うカナーって。。」

「一緒につけてくれるならいいけど」

「シュール…!」


結局、美少年をお面で隠そう作戦は失敗した。









だがしかし




「あああ、いい匂い!
どうする七瀬くん!焼きそばにする?お好み焼きにする?かき氷にする?焼き鳥にする?!」


「うん、その前にその綿あめ食べな。
他のは俺が買ってきてあげるから」


私が食べたいと言ったものは全部買ってきてくれるし



「金魚!!」

「荷物持っててあげるからやりな」


やりたいことも全部やらせてくれるし


「足痛くない?一回どこかで休憩する?」


すごく気遣ってくれるし








気づけば七瀬くんに存分に甘やかされていた。










「……やばい。完全に絆されてた…」


「そうなるようにしてるから当然だね」


「……」


「そんな目で見ないでくれる?
俺はただ時間をかけてじっくり橘さんを落としていこうと思ってるだけだから」



「……」



「最終目標は俺がいないと生活できないって言わせることかな」



「いや怖いわ!」