天然たらしが本気を出す時。





「プリント持つよ」と言ってくれた七瀬くんにお礼を言い、廊下を2人で歩く。


けれど2人ともなにも話さなくて沈黙が流れる。

…職員室遠いよ!
なんでもっと近くにないの。

気まづさをどうにかしたくて、窓の外の青葉に視線を向けてみたはいいものの、沈黙は守られたまま。




でも七瀬くんの

「…少しは意識してくれてる?」

その一言でそれは破られた。



「それはどういう…」


「そのままの意味。昨日の告白で俺のこと少しは意識し始めてくれたのかなって」


「それは……したくなくてもしちゃうよね」


「そっか。それなら良かった」





そう言って安堵したように優しく笑った。

多分、私はこの七瀬くんの笑顔に弱い。多分。






「そういえば修学旅行
同じ班になれたのびっくりした」


「あっ…マイとミユがごめんね。
なんか無理やりな感じになっちゃって」


「嬉しかったしいいよ」


「本当?」


「うん。だって誘ってもらえなかったらこっちから言いにいったと思うし」


「わお…」


「ははっ、なにその反応」








そんなこんなで職員室に到着した。


担任にプリントを渡し、いつかと同じようにナチュラルに「じゃあ帰ろっか」と言ってきた七瀬くんと一緒帰った。




七瀬くんは一緒に帰るときいつも家まで送ってくれる。それが申し訳なくて





「わざわざ家まで送ってもらうの悪いからいいよ」


そう言えば




「橘さんによく思われたくて 俺が勝手にやってることだから気にしなくていいよ」




と返されてしまい、結局今日も家まで送ってもらった。






………なんか、こそばゆい。