天然たらしが本気を出す時。


「あ、どうぞ座って」


なるべく端に寄り、七瀬くんが座るスペースを空けると「ありがと」と彼はベンチに腰をかけた。



「……」

「……」




何か話した方がいいよなあ。




そう思うけど、なんだか今は頭が回らないというか気力がないというか。






「…橘さん、生きてる?」


「え?…あ、生きてます。ちゃんと息してます」


「そっか、ならよかった」


「う、ん?」


「生きてるとたまにしんどい時とかあるよね」


「…?」


「あ、ごめん。今のなんか年寄りくさかった」


「そ、そんなことない、けど…」


「で、もしかして橘さんは今その時なのかなと思ったんだけど」


「え?」


「当たってる?」


「…うーん、これをしんどいって言っていいのかどうか…」






…よくわからない。


辛いとか悲しいとか、どの程度だったらそう言えるんだろう。

他の人からみたら私のしんどいは、しんどいじゃないかもしれない。

だから、よくわからない。