「い、いただきます…」
そのため、思わず話をそこで止めてしまった。
お弁当箱を小さな鞄から取り出し、蓋を開ける。
お母さんが作ってくれたお弁当は、私の好きなだし巻き卵にハンバーグも入っており、頬が緩んでしまう。
「…反応がいちいちかわいいな」
「へ……」
「なんでもないよ。
今日のお弁当に好きなもの、入ってたの?」
どうやらバレバレだったらしく、神田くんに私の心情を読み取られていたようだ。
「うん、入ってたの。お母さんのだし巻き卵とハンバーグ、本当に美味しくて……あっ、神田くんも良かったらどうぞ」
自分の好きなものを彼と共有したいと思った私は、何も考えることなくだし巻き卵を箸で挟み、彼のほうへ差し出す。
「え……」
「……神田くん?」
すると彼は意外にも目を丸くして固まってしまったため、不思議に思っていたその時。
「……っ」
彼に食べさせようとしていた、という事実に気づいた私は途端に恥ずかしくなった。



