「ここだよ」


連れてこられた場所は、最上階にある今現在使われていない空き教室。

そんな最上階には化学や生物の実験室と、ふたつの空き教室しかないため、実験の授業がある時以外は基本的に利用されない。

つまり人気がしくない場所であり、ここは最適だった。


彼はズボンのポケットから鍵を取り出し、慣れた手つきでドアを開ける。


「あ、あの、神田くん」
「どうしたの?」

「か、鍵は…どうして、持っているの?」


職員室に取りに行ったとなれば、空き教室の鍵が必要な理由を必ず聞かれるはずだ。

つまり借りれるわけがない。


それならどうして彼が、今は使われていない空き教室の鍵を持っているのか。

不思議でたまらなく、思わず聞いてしまった。