メガネの奥から見える、少しタレ目がちな優しい瞳。
すっと通った鼻筋に薄い唇。
一度も染めたことのないであろう、綺麗な黒い髪がさらに彼の存在を際立たせていた。
制服のボタンも上まできちんと閉め、ネクタイも綺麗に結ばれている。
誰がどう見ても真面目な神田くん。
けれどひとつだけ、少し危険さを漂わせるようなものが彼にはあった。
それは彼の耳たぶにつけられている、シルバーのピアス。
つまり彼はピアスの穴をあけているのだ。
そして今、私はそんな彼と目が合っている───
それが嘘のようで、にわかに信じられない。
「さっきからぼうっとして、どうしたの?」
突然伸びてくる、神田くんの手。
少し目にかかる私の前髪を、そっと横へ流す動作をした。
それだけなのに、胸が高鳴ってしまい。
同時に顔も熱くなった。
変な、感じ。
男の人に触れられることに、元々慣れていないのもあるけれど。
“あの”神田くんに触れられるだなんて、夢のよう。



