「何かあった?」


カタン、と小さく椅子の音を立てながら、神田くんが立ち上がった。

そして私に近づいてくる。


これは一大事だ。
思わず彼から視線を外すようにして俯く。

だって、神田くんが私に近づいてきている───


ただそれだけなのに、鼓動が速まるほど緊張するのには十分だった。


「あ、えっと、先生に呼ばれてて…」

やっとの思いで口を開いたけれど、声が少し震えている。
緊張がバレバレだ。


「進路の話だよね」
「……え」
「俺も、この後あるんだ」


柔らかい口調。
思わず顔を上げると、私の目の前で立ち止まった彼。

身長は180センチあるんじゃないかと思うほど高く、思わず見惚れてしまうほどかっこいい神田くんがこちらを見ていた。