だからみんな、神田くんを恐れるようになった。

優しい雰囲気を漂わせている彼が、どこか“作っている”ようにも感じられて。


誰かに話しかけられない限り、神田くんはいつも本を読んでいたから、彼から周りに話しかけることはまずない。

つまりいつも、周りから。


そのため、神田くんがひとりになるのは簡単だった。

彼がどう思っているのかはわからないけれど、全く気にも留めない様子だったようだ。


それは、高校二年になった今でも同じ。
ひとりは平気らしい。

そのような光景にはいつしか周りも慣れていき、恐れなくはなった分、今度は遠くから彼を見つめて騒ぐ。


そんな日々が、今では当たり前になってきた頃に。
こうして彼に名前を呼ばれたから、不思議でたまらない。