「た、確かに行ったけど別に何もなかったっていうか……」


「あっただろ?俺にも捨てられた〜とか言って泣き出すし、すげぇ泣き虫なところ見せるし。

抱きしめても頭撫でても抵抗ひとつしねぇし、せっかく別々に寝ようとしたのに寂しいのか泣き出すし…だから手握ってやったら嬉しそうに笑ってな」


「や、やめてっ…!」


恥ずかしくなって涼雅くんを止めようとしたけれど、彼は口を閉じようとしない。



「最後には俺にキスされたしな」
「……へ」

「じゃ、あとは自分でなんとかしろよ?」


なんだか衝撃発言をしたあと、逃げるようにして涼雅くんは病室を後にしてしまう。

き、キス……?


まったく見に覚えのない言葉に、戸惑ってしまう。
つまり涼雅くんは嘘をついて───



「……白野さん」
「……っ、あ、あの神田くん、これは誤解で」


怒っている。
今の神田くんは不機嫌オーラ丸出しで。



「こっち来て」
「あの、本当に」

「来てくれないと口聞いてやらないよ」
「……っ」


それは嫌だと思った私は、大人しく彼のそばまで行く。


「あの、神田くん…」
「何」

「怒って、ますか……?」
「これで怒らない人間とかいるの?」

「うう……ごもっともです」


どうしよう、神田くんがとても怒っていて怖い。