神田くんが通ったコンクリートの上には血が付着していて、怪我の酷さが伺えた。


「あんま動くなよ」


外に出ると宮木さんが車を停めて準備しており、ふたりがかりで後部座席に神田くんを乗せていた。

その後涼雅くんは助手席に乗り、私が神田くんの横に座る。


その時夏祭りのことが思い出されて。

今回はさすがに神田くんの病院が先だろうと思っていたのだけれど───


「宮木、さん…とりあえず、白野さんを先に家でかくまって……」


また彼は、私を優先する。


「……おい拓哉、お前今の自分の状態わかって言ってんのか」


神田くんを睨みつける涼雅くんに対し、彼は小さな笑みを浮かべた。


「……この車も、狙われているかもしれない…白野さんの、命が最優先だよ…」


息が荒れ、汗もすごいというのに。
話すのも辛そうだというのに。

無理して声を出そうとする神田くんは、むせて咳をしていた。


「もう喋んな。宮木、今回は拓哉優先だ」
「……いえ、神田様のご命令通りにさせていただきます」



ぎゅっと心臓が締め付けられるように苦しくなって、私は思わず口を挟んでしまう。


「どうしてですか…!神田くんがこんな状態なのに!」

「……白野様、神田様のご命令は絶対です」
「今はそんなこと言ってる場合じゃない!」


泣きながら訴えても宮木さんが折れてくれることはなく。

そのまま車が発進してしまう。



嫌だ、このままじゃないと本当に神田くんが命が危ないのに。


どうしようと思いながら神田くんを見ると、意識がはっきりしていないのか、ぼーっとしていてうっすらと目を開けている状態だった。