「……白野さん」


真っ先に彼に抱きついた私。
二発目に撃った弾は、どうやら右の太腿に当たったようで。


私が抱きつくのとほぼ同時に、私のほうへと倒れ込んだ彼。


「……神田く、ん…?」
「ごめ、多分血がつくからっ、俺から離れて…」


荒くなる息。
夏祭りの時のように汗もすごい。

白いシャツはじわじわと血で染まっていく。



「そんなのいいから、神田くん早く…」
「どうして俺から、離れて…龍崎のとこ行こうとしたの…」

「そんなの後でいくらでも怒っていいから、先に治療しないと」

「無事でよかった」


まったく私の話を聞いてくれない彼。
ただ荒い息のまま、私にもたれかかっていて。


「……っ、涼雅くん!早く、神田くんを…」

「わかってる。……お前、いくら敵の目を引きつけるようにするからってやりすぎだろバカが」


いつのまにか私の隣に来ていた涼雅くんは、神田くんの体を起こして支える形にした。

その格好もまるで夏祭りと同じで、違うのは怪我の酷さだった。



「別にこれぐらい平気だよ…」
「嘘つけ、フラフラ野郎」

「……ふは、ひどいね」
「いいから喋んな」


神田くんはまだ笑う余裕があるようで、目を細めて笑ったけれど。

怪我が痛んだのか、すぐまた顔を歪めていた。


どうして、私のためなんかに。
ここまで命懸けで守ってくれるの?


撃たれた太ももが痛むのだろう、足を引きずるようにして歩く神田くん。


「……うう」

手で口元を押さえ、泣くのを必死で堪える。



「……ごめんね、白野さん。
また巻き込んじゃって」

「……っ、喋らないで、いいから」


首を横に振りながら、神田くんには安静にしてほしいと願った。

ダメだとわかっていたのに、結局目から涙が零れ落ちてしまう。