闇に溺れた天使にキスを。




これだとダメだと思った私は慌てて涙をぬぐいながら立ち上がり、教室を後にする。


「……おい、白野」
「す、すぐ帰ってくるね!」


どうせお弁当を食べようと思ったところで、食欲が湧かないため食べられない。

だから昼休みが終わるまでに涙をおさめようと思い、人気のない場所を探す。


途中、足がおぼつかなくて何度も転びそうになったり、頭痛がひどくてその場にうずくまりたくなった。



原因はわかっている。
寝不足と栄養不足だと。

それでも食べられないし、眠れないのだから仕方がない。


結局保健室に行こうと思った私は、一階の人気がない廊下を歩いていると───



「……っ」

職員室にでも寄っていたのだろうか、手にプリントを持っている神田くんが向かい側からやって来て。


思わず足を止めてしまう。



できれば引き返したいけれど、避けているのがバレてしまう。

それだと神田くんを意識していると思われて、余計に面倒くさがられてしまう恐れだってあるため、私は彼のほうを見ないようにして横を通り過ぎることにした。



だって神田くんを見てしまえば、きっと冷たい眼差しを向けられる。

そんなの怖いし耐えられない。


ぎゅっとスカートを握り、少しふらつく中で神田くんの横を通り過ぎようとしたその時───



クシャッと、紙を強く握る音が聞こえたかと思えば。



「……あからさますぎて、腹が立つよ」


久しぶりに聞いた神田くんの声。

確認する間もなく、気づけば腕をすごい力で引っ張られてしまい。



「……いたっ」

背中に鈍い痛みが走った。
乱暴な扱い方。


視界に映ったのは、冷たく私を見下ろす神田くんの姿で。


背中には壁があり、そこに押さえつけられている私の体。