闇に溺れた天使にキスを。




いつもより小さく感じるお兄ちゃんの姿。

最初はただ私を力なく抱きしめていたけれど、ようやく落ち着いたのか、お兄ちゃんが口を開いた。


「……俺と未央は、実の兄妹じゃないんだ」


けれど衝撃的な告白に、私は目を見張って固まることしかできなくて。

言葉の意味を理解するのに時間を要してしまう。



お兄ちゃんと私は、実の兄妹じゃない…?


それってどういうこと?
そんなことってあり得るの?


わけがわからなくなって混乱してしまい、言葉を返せなくなる。



「俺もまだ信じきれてないけど、事実なんだ。
結果がそう言ってる」

少し声だけでなく、私を抱きしめている手が震えだした。


「結果…?」

「聞いたんだ。両親が話してるところ。
“そろそろ話したほうがいいんじゃないか”って。

“俺は未央や両親と血の繋がりがないんだ”って」


震える手が、抱きしめる力を強めた。
苦しいけれど抵抗することなんてまったく頭にない。

信じられないことがお兄ちゃんから話されていて。


私やお母さん、お父さんと血の繋がりがない───?



「怖くなって、嘘だと思いたくて。友達の親がそういうことを調べられる仕事してるらしいから頼んだんだ。

DNA鑑定ってやつをバレないように。
そしたら、結果が…」


「無理して話さなくていいの。
辛いなら、もう大丈夫だからっ…」


お兄ちゃんが今にも泣き出してしまいそうで、壊れてしまいそうで。

怖くなった私は慌てて止めに入る。


「……未央、これこらどうしたら…俺、自分の両親のこと知りたくて」


何も知らされていないお兄ちゃんは、きっと今相当なダメージを受けている。

私だって混乱して、あまり飲み込めていないけれど───


「お兄ちゃん…」


本当に弱くて無力な私は。

苦しんでいるお兄ちゃんに何もすることができなくて、こんな自分が嫌になる。


神田くんや涼雅くん、それからお兄ちゃんに助けてもらってばかりで何も返せていない。

そんな私に価値なんかあるのだろうかって。


そのため、ただ私はお兄ちゃんを抱きしめ返すことしかできなくて。


何も解決策なんて生み出せないまま、ただ時間だけが過ぎていった───