闇に溺れた天使にキスを。




この日も家まで送ってもらい、宮木さんと涼雅くんにお礼をした後家の中に入る。


「未央ー!今日はいつもよ40分遅かったけど何があったんだ!」


玄関のドアを閉めるなり、お兄ちゃんがいつもの調子で2階からやってきた。

待っていたかのように目を輝かせ、私を抱きしめるお兄ちゃん。


「お、お兄ちゃん…ここ玄関」
「今日はオムライスにしたぞ!未央、オムライスも好きだろ?」


「え、やった……オムライス…!」


単純な私はオムライスという言葉に反応し、つい喜んでしまう。


「いや、ちが……とりあえず離して」


喜んだ後にはっと我に返り、またお兄ちゃんに対して抵抗を始めた。


「もうかわいいやつだな。今度未央に向けた特製お子様ランチでも作ってやろうか!」

「……むっ」
「嘘、嘘だからごめんって」


お子様ランチってひどい。

私を小さな子供だとバカにされているように思えたからだ。


「まあでも、出来立て食べたいだろうし準備してくるな!ふわふわな卵乗せてやるから許してくれ」


けれど今日は珍しく、すぐ離してくれたお兄ちゃん。

さらにはにこにこと満面の笑みを浮かべていたため、少し心に引っかかるものがあった。


いつも通りに見えて、いつもと違う様子のお兄ちゃん。


「未央?早くしないとお兄ちゃんが少し食べて間接キスしてやるぞ」

「だ、ダメ……!」


お兄ちゃんに急かされた私は慌てて手洗いうがいをして、服を着替えに部屋へと向かう。


部屋着姿になり、またリビングに行ったけれど。



「……っ」

先にリビングのテーブルにオムライスを置いて待っていたお兄ちゃんは、どこか悲しげな瞳をして一点を見つめていた。