「なんだ、好きな人いるのかぁ」
「残念だね」
「その相手は前の高校なのか?」
みんな口々に話し、先生も止めようとしないため今は自由時間のようなもので。
「あー、案外すぐ近くにいたりして?」
「……はぁっ!?どういうことだよ」
涼雅くんはいったい何をしたいのかと思い、また顔を上げて彼と視線を合わせにいったけれど。
その時にはもう涼雅くんは私のほうを向いていないどころか、とある席に歩き出し───
「よお、拓哉。久しぶりだな」
そこは神田くんの席で、途端に周りが静かになった。
まさか神田くんに絡むとは思っていなかったのだろう。
「どうして涼雅がここにいるの?」
神田くんはまだ状況を飲み込めていない様子で、涼雅くんに掠れた声で質問していた。
「なんでかって?そんなのひとつしかないだろ」
すると涼雅くんは机に手をつき───
「宣戦布告。言っただろ?
拓哉から白野を奪うって」
ふと、涼雅くんから笑みが消えた。
じっと神田くんを睨んでいるようにも見える。
私のためにわざとそう言って手伝ってくれているのだろうけれど、涼雅くんの完璧な演技に圧倒されてしまう。
「人間なんてすぐ心変わりするんだから、そのうち白野を本気で俺のモノにしてやるよ」
涼雅くん以外、誰も口を開かない。
ただじっとふたりを見つめている。
それで神田くんはいったいどんな反応をするんだろう───
少しでも、期待していた自分がバカだったと思う。
神田くんはもう涼雅くんを見て驚くことはなく、ただ冷静に彼を見つめていて。
その瞳は全く揺らいでいない。
つまり動揺なんてしていないのだ。



