「そうだな。
昨日雨が降ったおかげで、そこまで暑くねぇし」


涼雅くんは私より一歩先を歩き、ついていく形になる。


「……どこにいくの?」
「今は何食べたい?」

「うーん……パスタ!」
「パスタな、りょーかい」


私の返答を聞いて小さく笑った涼雅くん。
もうどこに行くのか決めてしまったようだ。


「結構有名なパスタ専門店が近くにある。
ちょうど良かったな」

「パスタ専門?
すごくたくさんの種類がありそうだね」

「あー確かに種類多いかも」
「何回もいくの?」


それにしても、パスタと言っただけでお店がすぐに浮かぶだなんてすごい。


「まあな。有名な店とか知っておけば、女喜ばせるのに有利だし」

「あっ……」


そういうことか、と今の言葉で理解した。

女の人の扱いに慣れているから、有名な店などもリサーチ済みなのだと。


さすがは涼雅くんだと思った。


「それなら今日は私も喜ばせてもらう…!」
「ハードル上げるようなこと言うな」

「上げてないよ、本心だもん」
「本心が一番怖い」


わざとらしく肩をすくめる涼雅くんだったけれど、今日一日、本当に彼はたくさん私を喜ばせてくれて。

あっという間に時間が過ぎ、気づけば夕方になっていた。


「今日はありがとう」


帰りは宮木さんが迎えに来てくれ、いつものように後部座席に乗り込む私と涼雅くん。


「雪夜様、頼まれていた制服です」
「ああ、さんきゅ」

「制服……あっ」


そこまで言われて思い出した。

今日は学校をサボって涼雅くんと出かけていたのだということを。