「神田くん…ここ、電車で」
「そうだね」


そうだね、の一言で終わらされる。
私にとったら大事なことだというのに。


「目立っちゃうよ…」
「ならさっきの言葉、訂正しようか」


彼との距離が近い中、熱くなる頬に先程から手を添えられたままで。

撫でるように触れてくるから、少しくすぐったい。
けれどそれ以上に鼓動が速くなって恥ずかしかった。


どうやら本当に周りの目を気にしておらず、私がさっきの言葉を取り消すまでこのままの状態のようだ。


神田くんは、優しいけれど。
意外と意地悪で強引な部分もあるようで───


「あ、あの」
「うん?」

「やっぱり、神田くんと一緒に行く、から…」


この手を離してほしい、とまでは言えなかった。

バレているとは思うけれど、意識しているのが丸わかりになってしまうから。