闇に溺れた天使にキスを。




意識すればするほど顔が熱くなっていき。
慌てて俯いて、彼から視線を外す。


「白野さん」
「ど、どうしたの…?」

彼に名前を呼ばれたけれど、返事をするだけで顔は上げられない。


きっと今の私の顔は真っ赤だろうから。



「話をする時は、顔を上げないと」
「……っ」

どうして今、それを言うのだろうか。


とてもわざとにしか思えない。
私の反応を楽しんでいるんじゃないかって。


「い、今は無理です…」
「どうして?」

「満員電車で苦しい、から」


嘘。
本当は全然苦しくなんかない。


みんな押しつぶされる中、私は神田くんが少しスペースを作ってくれているのだ。

だから彼と私は直接触れ合っていない。
他の人たちは密着状態だというのに。