「そんな、最後のは意地悪だ」
「本気だよ。特に白野さんの照れ顔が大好き」

「それはやだ」
「仕方ないね、かわいい照れ方するのが悪い」


いつのまにか手の震えがなくなっていて、スムーズに包帯を巻き終わることができた。

神田くんは『ありがとう』と私にお礼を言い、浴衣を着なおした。


「じゃあ、次は白野さんの番ね」
「え……」


神田くんは体をこちらに向けたかと思うと、私の腕をそっと掴んだ。


「おいで」

それから優しく誘われ、私は迷うことなく彼の元へと寄り添った。


怪我が痛むかもしれないため、恐る恐る神田くんの胸元に顔を寄せて正面からくっつく形だったけれど。



「……ふっ、かわいい。
怪我を気にしてくれてるの?」

「だ、だって怪我ひどくて…」


それなら寄り添うこともやめればいい話だけれど、それは嫌だったから。


「ありがとう。やっぱり優しいね」


神田くんは小さく笑い、私の腰に手をまわす。
この時初めて包み込んでくれたのだ。


「じゃあそんな白野さんに俺からも聞きたいことがあるんだ」

いったい何を言われるのか想像できなくて、思わず顔を上げる。


「……そんな不安な顔しないで」


不安に思う気持ちが顔に出ていたようで、神田くんに笑われてしまった。

そのため深刻な話ではないと思い、今度は安心する。


「正直、今回の件はまだマシだと思うんだ。これからはもっと、白野さんを危険な状況に遭わせてしまうかもしれない」


ぎゅっと腰にまわされた手に力が込められた。


「それでも俺のそばにいてくれる?」

心なしか、神田くんの瞳が不安気に揺れた気がしたけれど。


私に迷いなんてなかった。