部屋に戻り、ドアを開けてドキッとした。


そこには少し湿った髪に、浴衣を大胆に脱いで上半身が裸状態である神田くんの姿があったからだ。


「……あ、白野さん」

神田くんは背中を向けている状態だったけれど、振り向いて私のほうを見た。


すると紅く燃え上がるような鳳凰の和彫りが目に入り、色気と危険さが感じられる。

まるで、初めて保健室に神田くんの和彫りを見た時のようなシチュエーションだった。


「…やっぱり」
「え…」

「浴衣、似合ってるね。
すごくかわいい」


ふわっと、さわやかな笑みを浮かべる神田くん。
本当に私をドキドキさせるのが得意な人だ。


「そ、そんなことない…よ」

恥ずかしくなって、神田くんから視線を外す。
その時にふと視界に入ったものがあって。


それは神田くんが腰を下ろしているベッドのすぐそばに置かれてある、消毒液や包帯の入った救急箱のようなものだった。


「……あっ」

思わず神田くんが怪我をした場所に視線を向ける。


右下腹部のちょうど裏側あたりに、思わず目を背けたくなるような深く広がる傷があった。

平気そうに見えたけれど、その傷を見て平気なわけがないと思い直す。


「……ごめんね、気分悪くなるよね」

神田くんは消毒した後なのか、その傷を急いで隠すようにしてガーゼを当て、包帯を巻き始めた。


ひとりでは巻きにくそうだったため、意を決して私は彼に近づいた。


「神田くん、私がやるよ」

そこまで巻き方が上手とかではないけれど、人並みにはできると思う。


「え……」
「だから一回外すね」

神田くんの返答を聞く前に、まだ巻いている途中だった包帯を解く。