闇に溺れた天使にキスを。




「嫌だって言ったら…?」
「ほら、すぐそういうこと言って俺を苦しめる」


すると神田くんは拗ねた様子へと変わり。


「白野さんに拒絶されたら俺、生きていけない」


今度は大げさなことを言われてしまう。
生きていけないだなんて、流石に言い過ぎだ。

けれどそこまで私のことを思ってくれてるのかなって、少しだけ期待してしまう。


「本当だよ。拒絶されたら俺、どうなるかわからないからね」

「それは今も?」

「今もだよ。拒否されたら白野さんをこの家に閉じ込める」


拗ねたような口調だったけれど、彼が言うから冗談に聞こえなくて少し怖い。


「じゃあ私、拒否できないね」
「……そんな言い方はダメ」


なんだかいつもより幼い神田くん。

「今の神田くん、子供みたいだ」


いつもは大人びていて、かっこいい彼のことをかわいいなと思ってしまう。


「……うん、俺もよくわからない。白野さんといると調子が狂う。それも怖いって思うけど、それ以上に白野さんを欲しがってるから」


また彼の口から出た“怖い”の言葉。

いったい神田くんは何に恐れているのか、やっぱりよくわからないけれど。


「私も神田くんのそばにいたい」

私だって彼を欲しがっているのは確かだから。


すぐに会いたくなって、帰るのも惜しくなって。
神田くんが好きだなっていつも思う。


「……でも、ちょっと親に確認しないとわからないや……今から電話してくるね」


けれど泊まりとかしたことがない私は、親に心配かけさせないためにも確認をとろうと思った。


神田くんから離れてベッドからおり、部屋の隅に置かれてある自分の鞄を手に取った。


そしてスマホを取り出し、部屋の外に出ようと立ち上がると───


いつのまにか私のそばまで来ていた神田くんに、後ろから抱きしめられてしまう。


「か、神田く…?」

「もしダメだったらこの時間も惜しいから、ここで電話かけて」


神田くんは私を離す気はないようで、ぎゅっと腰にまわされた腕に力を込められた。