闇に溺れた天使にキスを。




連絡を入れたいけれど、スマホすら触れない状態かもしれない。

連絡がないとさらに心配になってしまう。


一度だけ行ったことがある神田くんの家は、どこにあるのかあまり把握できていないため、それはほぼ不可能に近い。


つまり他に彼と会える方法なんてない。
せめて無事だけでも確認したいというのに───


その時、ふと思い出した。
涼雅くんの連絡先を持っていることに。

慌ててスマホを操作し、連絡帳アプリを開く。


するとすぐに“雪夜涼雅”と登録してある、彼の連絡先が見つかった。


「あれ、未央。
今日なんか食べるの早くねぇか?」

「ごめん、用事思い出したから急がないと…」


一刻も早く連絡を取りたい。
涼雅くんとなら繋がるはずだ。


私は急いでお昼を食べ終え、食器を直してから二階へと上がる。

あまりお兄ちゃんに聞かれると心配されるか、質問攻めされる可能性もあるため部屋へと篭る。


そして涼雅くんの電話番号をタップし、スマホを耳へと当てる。

お願い、どうか繋がって───


すがるような気持ちでいる中、数回のコールで涼雅くんが電話に出てくれた。


『……もしもし、白野か?』

スマホ越しに聞こえたのは、確かに涼雅くんの声で。


「白野です、涼雅くんあの…」
『ちょうど良かった』
「……え」


神田くんの容体を聞こうとする前に、涼雅くんが安心したような声を出した気がした。


『あいつ、お前に会いてぇくせになんか連絡するの躊躇ってるみたいだから。お前がいいなら、今から迎えに行くからこっち来てくれねぇか?』

「……っ、会いたい」


他に聞きたいこと、たくさんあるけれど。
今の言葉で神田くんが無事だとわかったから。


「神田くんに、会いたいよ…」

思わず目から涙が溢れてしまう。