少し歩くと車が停まっており、まずは後部座席に神田くんを乗せる。
「じゃあ白野、拓哉の隣座れ」
「え…」
「俺は助手席に座るから、なんか異変あったらすぐ俺に言えよ」
「それなら涼雅くんが…」
「バカ、心配なんだろ?
自分の浴衣をそんなんにしてまで」
真剣な目で私を見つめる涼雅くん。
「……っ」
「拓哉のためにそこまでしてくれてありがとうな」
そう言って涼雅くんは優しく微笑んだかと思うと、私の背中を押して神田くんの隣へと座らせた。
今の言葉に泣きそうになったけれど、我慢してちらっと神田くんのほうに視線を向ける。
相変わらず汗をひどくかいていて、目を閉じている神田くん。
「白野、このタオルで拓哉の汗を拭いてやってくれねぇか?」
「あ、うん…わかった」
助手席に座った涼雅くんから白いタオルを受け取る。
そして神田くんの額にそっと触れると、彼の目元がピクリと動いた。
「…まずは白野さんの家に向かって」
それからゆっくりと目を開け、彼が私の手首を掴む。
「ありがとう、白野さん。
自分でやるから大丈夫だよ」
いつもより顔色がずっと悪いというのに、今この状況でも笑う彼に胸がぎゅっと締め付けられる。
「は?拓哉、何言ってんだ。
まずは医者に診てもらうのが先だろ」
「この車も狙われているかもしれない。
まずは白野さんの安全が優先」
涼雅くんの言う通りだ。
神田くんは今、何を言っているの?
こんな時でさえ周り優先の彼に対し、首を何度も横に振る。



