早く救急車を呼ばないと、神田くんの傷は悪化してしまうばかり。
けれど呼ぶなと脅されているため、どうすればいいのかわからなくなっていると───
「……拓哉!」
ガサッと、生い茂っている草むらに足を踏み入れる音と、聞き慣れた声が耳に届いて。
「……っ、涼雅くん!」
思わず叫んだ。
ここにいるよ、とでも言うように。
すると涼雅くんはすぐに私たちの元へと来てくれた。
その顔は明らかに焦っており、走ってきたのだろう汗をかいている。
「白野、拓哉の様子は…」
「俺は大丈夫」
涼雅くんの姿を捉えるなり、無理矢理立ち上がろうとする神田くん。
ねぇ、どうしてそこまで無理をするの?
本人に聞きたいけれど、今この状況で聞けるわけがなく。
「バカ、お前ひとりじゃ立てねぇだろ」
「……いや、歩ける」
そんな強がってもかっこよくない。
だって今の神田くん、ひとりじゃまともに立てないくらいふらついている。
そんな彼を、涼雅くんが無理矢理支える体勢へと変えた。
「白野、お前もついてこいよ」
「……うん」
手先が震える。
思わず自分の手首をつかみ、震えを抑えようとしながら涼雅くんのすぐそばを歩いた。
けれどうまく足にも力が入らない。
何度もつまずきながら、転ばないようにしてついていく。
「……お前も大丈夫なのか?」
そんな私の異変に気付いた涼雅くん。
けれど急いで首を横に振り、少しだけ笑顔を作った。
「うん、大丈夫……だから早く、神田くんを…」
一刻も早く医者に診てもらわないといけない。
私なんか後回しでいいから。



