「神田くん、お金…」
「先に食べようね」
まるで私の言葉を遮るようにして、いちご飴を差し出される。
誘惑に負けた私は、差し出されたいちご飴をそっと食べた。
まずは甘い飴の味がして、次にいちごの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
これがたまらなく美味しくて、大好きなのだ。
「……すごい贅沢な時間」
一方神田くんは食べようとせず、じっと私を見つめるだけ。
「神田くんは食べないの…?」
「全部食べれるなら、白野さんが食べていいからね」
「そ、そんなの悪いよ…」
だって絶対食べれる気がするから。
神田くんに悪い。
「いいんだよ。白野さんの食べてる姿、かわいくていつまでも見られる。お代以上のものをもらいすぎて満足の域を超えてる」
「……えっ、と」
「たくさん食べてね」
「でも食べすぎたら太っちゃう…」
「その細い体でよく言えるね。それに今日くらいは大丈夫だよ」
私をとことん甘やかす神田くん。
油断していたら好きなものを好きなだけ食べさしてくれ、将来絶対太ってしまうだろうなと今から危機感を抱いてしまう。
そもそもまだ付き合って間もないのに、私は遠い先のことまで何考えて───
「……っ」
途端に恥ずかしくなり、顔がぶわっと熱くなる。
これぞ自滅に間違いない。
「白野さん?」
「い、いちご飴食べる…っ!」
「どうして顔赤いの?」
「すごく暑くて…いちご飴ください」
「もーそんなかわいく頼んで。
焦らなくてもとったりしないよ」
とられるのが嫌で焦っているのではない。
恥ずかしさを隠すために必死になっているのだ。



