闇に溺れた天使にキスを。




「もー、わかってよ。
俺がどれだけ白野さんが好きかって」

「……っ」


突然の“好き”という言葉に、心は準備をできていなくて恥ずかしくなる。


「白野さんの行動ひとつで感情が揺さぶられる」
「それは私のほうだよ」


神田くんの言動や行動で、どれほど私の感情が動かされることか。


「白野さんは照れ症なだけだよ」
「……あっ、酷いこと言う」


照れ症ってわけじゃない。

ただ神田くんを前にすると、感情の制御が効かなくて、彼の思うがままになってしまうのだ。


「はい、次の人はどれ買う?
あら、美男美女のお似合いカップルだね」


そうこうしているうちに、私たちの番がやってきて。

屋台の人にはカップルだと言われ、つい頬が緩んでしまった。


「あらぁ、そんなかわいく笑っちゃって。よくもまぁこんなかわいい子を捕まえたものだよ、あんた」

「そうですね、彼女を知るほどかわいさに溢れています」

「……?」


屋台の人と神田くんは、何やら楽しそうにニコニコ笑って会話をしている中。

私はその話に入れないでいた。


「なんだい、ベタ惚れかい。じゃあもちろん、彼女のために好きなだけ買ってあげるんだろうねぇ?」

「もちろんです。この子はいちご飴が好きみたいなんで、いくつかもらえますか?」


「いちご飴ってこれまたかわいいものが好きだね、なら3つくらい買っていくかい?」

「じゃあお願いします」
「み、3つも買うの…?あ、お金」


慌ててカゴ巾着から財布を取り出そうとするけれど、その間に神田くんが払ってしまう。


「あっ、神田く」
「次の人が並んでるから一回出よう」


そう言って私は神田くんに手を引かれ、石の壁がある端までやってきた。