闇に溺れた天使にキスを。




「俺たち兄妹に見られてるみたいだね」
「……っ」

少し歩いたところで彼が先ほどの話に触れた。
できればあまり触れてほしくないのだけれど。


「どうしようか。
兄妹なら、一緒に住むのもいいね」

「な、何言って…」


落ち込んでいる私に対し、彼は嬉しそうだったからムッとしてしまう。


「だって私は、彼女に見られたい…」

神田くんの妹だなんて子供扱いされているようで嫌だ。


彼にとって一番の存在、彼女でありたい。


「まあ周りが何を言おうと、白野さんは俺の彼女なんだけどね」

神田くんが私の腰にまわした手を離したかと思うと、今度は手を握られる。


それも恋人繋ぎ。


「か、神田くんっ」
「ダメ?俺、白野さんと恋人らしいことしたい」

「……っ」


そんなこと言われたら、嬉しくて嫌だなんていえない。

それにこの人混みだ。


そこまで目立たないだろうなと思い、私も迷わず神田くんの手を握り返した。

少し恥ずかしい中、ちらっと神田くんを見れば。
優しく微笑んでくれて。


好きだなぁって、素直に思った。


神田くんと浴衣を着て、恋人繋ぎをしながら屋台を見てまわる。

なんだか夢みたいで、楽しく幸せな時間。


「……あっ、見て!いちご飴がある!」


お祭りで一番好きなのはいちご飴。

りんご飴のほうが食べ歩きしやすいだろうけれど、私が好きなのはいちご飴だ。


無意識に神田くんの手を離し、屋台のほうへと足を進める。

「わっ…」

けれどすぐ腕を引かれてしまう。
それも、意外と強い力で。