「……ん」
そんなキスをされ、早々に息が苦しくなる。
もともと思考が鈍くなっているというのに、そのキスでさらに頭が働かなくなり、もっと欲しいとだけ思うようになって。
息を吸う時間すら惜しい気がした。
そのような私の意を汲んだかのように、彼は息をする時間すら与えてくれなくなる。
それでも人間というものは、息をしないと生きていけないもの。
酸素を求め、無意識に口を開く。
まるでその瞬間を狙っていたかのように、口内に生温かいものが入ってきて。
ゆっくりと口内をそれで侵される。
ついには舌まで絡められ、とろけてしまうんじゃないかと本気で思った。
これはただのキスじゃない。
キスよりもずっとずっと大人で、深く甘い。
そんなキスだ。
初めてのキスも、大人なキスも全部神田くんが初めてで。
脳内が彼で侵されていく。
何番目の女だとか、宮橋先生と関係があったとか。
全部どうでもよくなるくらい、目の前の彼に溺れ、そして求めていた。
「……んっ、あ…」
初めてだったから、私はされるがままの状態で。
彼の和服を掴み必死で耐えて声を抑える。
涙で視界が滲む中、体の力が抜けていく中。
恥ずかしさよりも、ついにこのキスを続けてほしいという気持ちが勝ってしまった。
甘い空気が部屋を流れ、このキスが終わるまで私は───
クラクラと酔いしれていた。



