「それなら白野さんは俺を求めてくれる?」
わからない。
理性というものがなくなるだなんて、そんなことあり得ない気がして。
「……わか、らないよ」
理性なんてもの、なくしたことがないから。
どう回答すればいいのかがわからなくなる。
「めちゃくちゃにしてやりたい。
こんなの初めてだから、俺も止め方わからない」
じっと私を見おろす彼は、物足りない様子で。
少し理性を欠いているように見えた。
「ねぇ、触れるのは我慢するから、キスくらいは俺の自由にさせてくれる?」
私から覆いかぶさったまま、離れようとしない彼。
和服が乱れ、綺麗な鎖骨が見えている。
拒否という選択を彼は与えてくれないというのに、そんなことをわざわざ聞いて。
けれど今の神田くんは、どこか焦っているようにも見えるのは気のせいだろうか。
「あの、どうしてそんなに焦ってる、の…?」
思わず聞いてしまう。
この後、何かあるのかなって。
「焦ってる、ように見えた…?」
けれど私の質問に驚いた様子の彼。
どうやら焦っているつもりはないらしい。
「う、うん…」
「きっと逆だね」
「逆?」
「焦らされているんだよ、俺。だから早く答えを教えて」
私の左手に指を絡ませ、ベッドに優しく押し付けられる。
これで片手の自由を奪われた。
初めから逃げ場なんてものはない。
「キス、は……自由にして、大丈夫です…」
今は嘘でも拒否をするのはいけない気がして、素直に肯定する私。
すると彼はすぐさま動いた。
自分の唇を押しつけるようにして、強引に塞がれる。
そこにいつもの優しさはなく、貪欲な彼の姿。



