「神田くんだけしか見えてないよ」
とっくに神田くんで埋まっている。
私だけが彼を好きなんじゃないかとすら思えるほど。
「本当に白野さんは俺を狂わせるのが好きなんだね」
小さく笑って、私の頬を触れてくる。
絶対に嘘だ。
だって狂わされてるのは、私のほうなんだから。
「あまり油断してると、突然食べちゃうよ」
頬に触れる神田くんの手がゆっくりと下におりていき。
私の首筋を指でなぞった。
オフショルトップスを着ているため、肩は無防備に開いており、隠せるものがない。
その結果。
好き放題になぞられ、遊ばれる。
その度にゾクゾクしてしまい、体が反応する私を見て彼はとても楽しそうに笑っていた。
「こんな服着てくるから」
まるで自業自得だと言われてるみたい。
この格好がダメだと、神田くんの指で伝えられる。
「は、ずかし……ダメっ…」
彼の手首を掴んで抵抗しようと試みたけれど。
「この手、邪魔だよ。どけようね」
優しい声のくせして、言っていることはめちゃくちゃだ。
「や、だ…」
「離さないと噛み付くよ」
さっきといい今といい。
食べるだの噛み付くだの、乱暴な言葉を使う神田くん。
彼にしては珍しい。
「そんな乱暴なことしないで」
「白野さんが抵抗するから乱暴になるんだよ」
微笑んでいる彼だったけれど、目が笑っていない。
きっと冗談で言っているつもりはないのだ。
つまり、彼は本気であると───
「……っ、結局好き放題…」
なんでも思い通りになるのは不服だったから、せめてもの抵抗としてそう言った。
もちろん、神田くんの手首を掴んでいる手は大人しく離したけれど。



